朝日新聞 東京本社見学レポート-紙メディアとしての「新聞」に触れ、何を思う-


築地市場の正面に立つ、日本の言論で大きな影響力を持つ朝日新聞。ずいぶんと昔、高校受験の勉強をしているときに「天声人語を読むように」と塾の先生に指導された記憶がある(あいにくぼくは「良い」生徒でなかったのでほとんど読んでいなかった・・・)。その「天声人語」を連載しているのが朝日新聞。寒風吹きすさぶ年末のとある日に、おそらく知らない人はいないであろう朝日新聞の東京本社見学に足を運んできた。

受付カウンターで送られてきた案内状を提示して受付を済ますと、見学記念にもらえる新聞に掲載するための写真撮影を早速してくれる。これはすごくうれしいお土産。これまで色々な見学施設に足を運んできたが、このお土産はトップランクに値するほどうれしい品だ(早速、自宅で飾ってる)。なによりも、一つしかないお土産がすぐに貰えるのだから。どのようなものか画像を貼り付けて紹介したいところだけど、それをしてしまうと面白くないので、興味を持った人はぜひとも見学に行ってゲットしよう。朝日新聞のお土産のキーワードは「モノより思い出」といった感じかも(どこかで聴いたコピー・・・)。
見学ツアーが開始するまでの間、見学者は見学ホールで待機することとなっていた。ホール内には輪転機(縮小されたもの)など展示物が並べられ、無駄な時間を作らせないような工夫が施されていたことはよかった。
冒頭、朝日新聞の紹介DVDを大きなスクリーンを使って鑑賞。新聞ができるまでの流れを、ドラマ「24」のようなテイストで15分程度かけてわかりやすく説明。正直なところ少々臭い。でも、実際に働いている人の生の声が紹介されているのは多くの見学施設もしていることながら価値が高い。だからこそ、社会科見学の児童・生徒のみならず就職活動を控えた学生にぜひとも観て欲しい(欲を言うと、就職活動を控えている学生にはネットの情報だけに頼らず、見学に行ってもらいたいところ)。新聞社の仕事を理解するには上映されたDVDは大変役立つと思うので、就職活動中の学生は見学してみてはどうだろう。
さて、見学ツアーへ。報道・編成局など制作現場、印刷工場、発送室を順に案内してもらう。ちなみに、それなりの距離を歩く。階段の上り下りもある。事前に覚悟しておいて欲しい。その上、ツアーのコースには記者などと見学者との間を隔てるものは何もないので(印刷工場では印刷機と隔てるものは心ばかしの柵のみ!)、あくまでも「見せていただいている」という気持ちを忘れず、互いに気持ちよく見学したい。
写真撮影は見学ホールと発送室のみしか許可されていない。なぜこれらでしか撮影が許されないのかというきちんとした理由を伴った説明は、これまでの見学経験の中で最もきちんとしていた。一方的なお願いでなく、見学者も納得の行く説明。これって見学に限らず、日常生活の中ですごく重要なんじゃないかとふと再認識させられた。
エレベーターに乗って、報道・編成局へ。ちなみに、エレベーターの扉には何やら文字の彫り込みが。世界各国の新聞一面が掘られている(近づきすぎると危険なので気をつけて)。よく見ると、すべて同じ日の新聞だ。その日は何の日なのか、きっと案内係が教えてくれるので期待しよう。

記者がいる現場も見学。想像と違ってずいぶんと落ち着いた雰囲気。見学前の想像では、電話がじゃんじゃん鳴り響き、フロアの中を記者たちが走り回っている感じだったものだから、妙な肩透かしを食らった気分だ。
見学中は、単に案内係の説明を聞きながら社内を歩くのではなく、所々立ち止まってクイズが出題されたりと、見学者とのコミュニケーションのキャッチボールが豊富だ。こうした仕掛けは楽しい上、記憶に残りやすい。決して物怖じせず(間違えたって恥ずかしくない!)、思いついたことをどんどん言ってみよう。
巨大な輪転機が轟音を立てながら新聞を刷っていく様は圧巻。見学ホールに展示されていた輪転機のレプリカがおもちゃに見えるほどの圧倒的な存在感。樹齢一万年の大木のような巨大ロールから紙を巻き上げて眼にも止まらぬスピードで印刷していく。サービス業に分類されるマスコミではあるものの、印刷工場だけを見ると製造業かのような錯覚を起こすほどの迫力が見る物に襲い掛かってくる。
見学ツアーの中で唯一写真撮影が許された発送室。そこでは刷り終わったばかりの新聞がこれまた眼にも止まらぬ速さの高速コンベアーで送り先別に仕分けされていく模様が見学できる。ちなみに、朝日新聞東京本社では見学ツアーを午前・午後に分けて開催されているが、夕刊の製作現場に立ち会える午後のほうが見応えはあると思うので、もし選べるのであれば午後の会を予約することをお勧めしたい。

新聞をはじめとした従来の紙メディアのあり方が問われ続ける昨今、見学を通じ紙という形の新聞の今後のあり方についてに関する回答は見出せなかった。ただ、朝日新聞という情報発信者についての雰囲気をつかむことができたため、見学会を通じ「朝日新聞」が発信する情報への信頼や共感というものが生まれるのであれば、発信の形がネットになろうが情報発信者としての地位が揺らぐことはないだろう。とはいえ、紙メディアがレガシーと言われるかもしれない時代に備え、早いうちに見学してみてはいかがだろうか。
いみじくも、今週発売の週刊ダイヤモンドの特集は「新聞・テレビ勝者なき消耗戦」。
こちらと見学の2面から今後のメディアのあり方について考えてみるのも良いかもしれない。

朝日新聞の新聞発行部数
2010年 8,031,579部(朝刊)3,357,950部(夕刊)
2011年 7,955,595部(朝刊)3,120,302部(夕刊)
施設情報:朝日新聞 東京本社

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