ビジネスマンへの企業見学のススメ


ここ数年、地味にではありますが工場見学が注目を集めつつあります。テレビ番組や新聞・雑誌など各種メディアで取り上げられる回数も増え、ゴールデンタイムのとある番組では工場見学コーナーがあることもしばしばです。
さて、近年注目度を増しつつある「工場見学」ではありますが、今回はもう少し広い枠の工場見学を含む「企業見学」を取り上げたいと思います。なお、「企業見学」には工場見学以外に、企業博物館やショールームの見学が含まれると理解していただくとわかりやすいでしょう。
ところで、ビジネスマンのあなたは大人になってから会社見学に行ったことはありますか?お子さんがいれば、夏休みの自由研究やお手軽家族サービスの一つとして足を運んだことがあるかもしれません。でも、お子さんがいないのであれば、大人になって企業見学に行ったことのある人はグッと減るのではないでしょうか。企業見学なんて、小中学生のときの社会科見学以来で、どうにも懐かしい響きを感じてしまうのが正直なところでしょう。
ただ、企業見学は決して子供たちだけのものではありません。ビジネスマンにも開かれたものであり、レジャーの1つであると同時にれっきとした業務の一環と捉えることもできます。むしろビジネスマンにこそ積極的に企業見学に足を運んでもらいたいと思います。
では、なぜ私がビジネスマンの方々に会社見学をお奨めするのか。その理由を3Cに当てはめて挙げてみます。

【競合(Competitor)を知る】
ビジネスを行ううえで気になるのは、やはり競合の存在です。「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」とはよく言われたもので、競争の激しいビジネス界で生き残るためには、競合の動向をつぶさに観察・把握しておくことは欠かせません。そこで活躍するのがインターネットなどを通じた情報収集です。確かに、これらはお金さえ払えば簡単に手に入るという点から大変有益であり、私自身も活用する機会が多いことは否めません。ただ、これら情報はあくまでも間接的に入手したものであって時として正しくない場合があるという注意が必要です。したがって、これらのリスクを回避するためにも、できる限り自らの足・目を使って情報を収集することをお奨めします。
そして、その収集方法の1つがライバル企業への訪問見学です。競合企業社員の見学を受け付けない見学施設もありますが、大概は広く開放されています。そして、うれしいことに大半が無料です。見学に行ってみると様々なことが発見できます。たとえば、その企業が見学者に何を最も伝えたいのか、どの分野に注力していているのか、普段の業務で誰を最も意識しているか。これらは展示スペースの面積や展示の仕方から類推することができます。
また、企業の見学者に対する接し方という観点でも、見学者と親しい関係を企業が築きたいのか、それともより畏まった関係を望んでいるのかという違いなども発見できます。おそらくこれらはレポートからは手に入れることの難しい貴重なデータの1つとして業務に役立つはずです。

【顧客(Customer)を知る】
Customerというと最終消費者が思い浮かびますが、便宜上「取引先」と解釈します。
たとえばネジを作っている会社に勤めている人であれば、そのネジを使って製品を作る会社が取引先であり、一方で逆の立場も成り立つわけです。なぜ、取引先を知ると便利なのか。それは、営業活動を行う際に取引先の雰囲気、重点商品および今後の戦略の方向性などを把握できるからです。提案には決して侮れない情報源だと思います。
例えば、過去に取り組んだコンサルティングサービスの中で次のようなものがありました。部材メーカーB社と取引のあるA社からの相談は、B社の注文に応えるという受身の状況は今後の売上の先細りを考えると回避すべきもので、能動的な営業を行いたいというものでした。従来のA社はB社の注文の背景がわからず、B社の発注内容に合わせた製品を納品していました。単なる御用聞き状態です。A社としては、自ら提案をB社に行って積極的に製品を売り出すことで、B社からの値下げ圧力から解放されたいとの意向もありました。そうした背景から、B社の取引先である最終製品メーカーC社の意向(どうした商品を売り出そうとしているのかなど)を把握する必要を認識し、さまざまな調査をお手伝いさせてもらいました。当時はC社へ見学に行くというアイデアを提供するまではできませんでしたが、今振り返ってみると見学を提案するべきだったと少々後悔しています。
もちろん、見学を取り入れなくてもA社の売上は伸びたことは付け加えて起きますが、見学をすることでよりいっそう売上が伸びたことと信じたいです。

【自社(Company)を知る】
自社を見学したのは新入社員時代の研修でのみという人が多いのではないでしょうか。見学施設が本社にしか設置されていないなど距離的な障害があって足を運ぶ機会に恵まれないこともあるかと思います。自社のことは何でも知っていると思っていても、なかなか他の部門がどのような製品・サービスに携わっているのかが判りにくいことも多々あるはずです。極端な話、パーティションで区切られたオフィスに勤めるビジネスマンには、隣の席の人が何をしているのかわからないケースもあるほどですから、あながち大げさではないはずです。自分の業務が全社でどのような位置づけを占めているのかを認識する上で、自社の見学施設へ足を運ぶことはお奨めできます。
これからのビジネスマンは企業に勤めていても、個人商店の気概が必要です。企業の暖簾を借りてビジネスを行うとの認識です。そう考えると、同僚は仲間であり顧客と見る必要性がますます高まってきます。同僚を顧客としてみるのなら、【顧客(Customer)を知る】と同じような意義も見出せます。

以上のように、ビジネスマンが企業見学を行う意義を3つから挙げてみました。